April 08, 2005
Mercury Rev "The Secret Migration"
*「今年の夏にはフジ・ロック・フェスティバルでの来日も決定しているMERCURY REV、3年ぶりの新作は、幽玄壮美な装飾音の霧と樹々に見え隠れする引き締まったバンド・サウンドに注目です。
95年発表のアルバム"See You On The Other Side"「向こう側で逢いましょう」なんてヒガンじみたタイトルで夜明けの来ない世紀末的狂騒音楽を鳴らした彼らは、続く4作目"Deserter's Songs"「見捨てられた者の歌」にてアメリカン・ゴシックの闇の中で妖しげに光を放つサイケデリアを垣間見せました。5作目のタイトルでは"All Is Dream"、つまり「全ては夢」宣言をし、ストリングスを多用した夢心地過多なサウンドを展開。一躍現代のヒガン・ロック・バンドの王座に君臨しました。その楽園志向がファンタジーを超え、もはや居心地の悪さまでを感じさせるが故に、6作目となる今作での展開には期待がかかっていました。結果、肩透かしをくらってしまった人も多そうなある意味でのスケールダウン路線が一筋縄ではいかぬ彼らの奥深さを感じさせます。
"See You On The Other Side"を入り口の作品と捉えるならば、この作品は出口のようなイメージです。一時は仙人になりかけた彼らが柔軟性に優れたしなやかな実体を得て還って来たような感じがします。マジカルなパワーは残しつつもロックバンドならではの肉体性を活かしたアンサンブルを中枢に据え、その絶妙なバランス感覚が今の空気と非常にマッチしています。"往って、返ってきた"というにおいが音全体から放たれていて、正に両岸の味があるヒガン・オンガクと称すべき一枚です。▼
October 27, 2004
羅針盤 "いるみ"

*「序盤、特に3曲目などはジョン・ケイルとモーリン・タッカーが乗移ったか?というほどのミニマル・ロック。居心地のむず痒いテンポのビートとギターの刻みに載せるきれいなメロディーが正にベルベット・アンダーグラウンドのよう。ジャーマンロックのアンダーグラウンドの湯加減ではなく、アメリカン・サイケの温度感と言った方がしっくりくるのは何故かしら。山本精一さんという存在がシンガーソングライター的な文脈も捉えているから?
羅針盤は前作 "福音" である種のストイックさを携え、次のステップに進んだというような印象を受けました。その要因として考えられるのはタイトルや歌詞にも顕著ですが、宗教的と言えるほどの神々しさを垣間見せていた点も挙げられます。それまでの彼岸のひだまりを抜け出して、天上から差しこむ眩い光りで空間を飽和させてしまう瞬間がいくつかあったように思います。今作に関しては天上の光りは教会のステンドグラス越しに和らいで届き、"福音"以前とは質感の違う親和性を獲得しているような気がします。ピアノに導かれて始まり美しいギターノイズで終幕を告げるラストの曲 "チャーチ" がとても感動的です。
「神は今 地に降りて この世の果ての教会で祈る」 ▼
October 17, 2004
彼岸レビュー:Sandy Hurvitz"Sandy's Album is Here at Last!"
busse posse issue vol.3 (04/09/18)
彼岸ディスク・レビュー欄より

*「ロックからしてみたら稀代の怪作とも言えるフランク・ザッパの「アンクル・ミート」その架空のキャラクターのモデルになったというだけで、聞いてみたくなるサンディー・ハーヴィッツのデビューアルバムです。プロデューサーだったフランク・ザッパは意見の食い違いで途中降板するもののジャケットに登場しています。内容は見事なまでの彼岸フォーク。ジョニ・ミッチェルやCSN&Yにも影響を与えたというソングライティングの才能は流石です。時折現れるフルートの音色が幽玄でひんやり気持ち良い。後にエスラ・モホーク名義で出した作品はフリーソウルで再評価されたという普通にいいうたですが、やっぱどこかヘン。▼
October 17, 2004
彼岸レビュー:DJ Vadim"U.S.S.R The Art Of Listening"
busse posse issue vol.3 (04/09/18)
彼岸ディスク・レビュー欄より

*「彼岸よりかかるビートの橋。彼は物理的にもヒップホップのシーンからは彼岸といって差し支えの無い場所に居ました。そしてビートで色んな岸に橋をかけては奇跡的な瞬間を溝に刻みました。どうしてドラムの音がこんな質感なんだろう…。いつ途切れてもおかしく無い儚さは、ブレイクの度にこのままレコードが終わってしまうのでは?という恐怖感のようなものを抱かせます。単音の連続にここまでブンガク性を付与させるのはヒガンジンの成せる巧みの技。彼とAnti Pop Consortiumが架けた橋、the Isolationistなんて彼岸が深刻過ぎてこんな場では寧ろ紹介しずらいほどです。CD自体も彼岸にいっちまったらしく手に入りにくいそうですが。▼
January 12, 2004
Ben Watt "North Marine Drive" / Tracey Thorn "a Distant Shore"
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*「僕にとって"2003年思わぬ嬉しいプレゼント大賞"となったこの再発。
EBTGで現役活躍中のベン・ワットとトレーシー・ソーンが80年代前半に
リリースしたソロ作、言わずもがなの伝説的大名盤です。
この二枚の再発の"プレゼント性"はその重さ、
なんとうれしい180gram重量盤(回転時、安定するし深く彫れるし音が良い)
ジャケットやインナースリーヴもいい紙でしっかりとしたつくりになっています。
そして"north marine drive"は、ロバート・ワイアットとの競演作
"summer into winter"5曲をお尻に追加した便利ヴァージョン。
どちらもギター、ドラム、ピアノ程度のシンプルなセットで
"うた"を中心に据え、尺も短め、末永く聴ける一家に一枚盤です。
ベン・ワットはボブ・ディラン、トレーシー・ソーンはヴェルヴェッツの
カバーを含み、ロバート・ワイアットも絡んでいるとあっては
ヒガンオンガクの枠としても推薦しないわけにはいかぬ越境の美。
誰そ彼を三回開催した2003年の年越しは
この静謐なミニマルサウンドと共にしっとり暮らしました。
今年はどんな年になるんだろう。▼
October 31, 2003
彼岸レビュー:monika linges"floating"

アシッドジャズで再評価されたドイツの歌姫。
ブラジリアンフュージョンに影響された楽曲をバックに
広がるモニカリンゲスのスキャットは、時に萌え上がり
時に儚げに美しくゆらぎ、紅葉のこの時季にぴったり。
全編を覆う浮遊感たっぷりの美しいエレピもさることながら
"floating on the edge..." なんて歌詞もただならぬ彼岸の様相を呈しています。
そしてなんといってもかはたれ時の水面を写したジャケットが素敵です。
October 31, 2003
彼岸レビュー:Milton Nascimento"journey to dawn"
夜明けへの旅は誰そ彼から始まります。
遥か遠い地にまでおもわず郷愁の想いを馳せてしまう
あたたかいメロディーと歌声。
同じ誰そ彼でも日本とブラジルではこうも
スケールに差があるのかと納得の大袈裟なアレンジが、
でっかく見えてそうなお日様を瞼の裏側に映写してくれます。
時差の彼方にふっとんで体験する異国の誰そ彼も色彩豊かでまた美し。
September 15, 2003
彼岸レビュー:john cale"sun blindness music"
busse posse issue music side (03/09/13)
彼岸ディスク・レビュー欄より
john cale "sun blindness music"
*「ミニマル音楽は静謐で瞑想的な作品が多いので
図らずともお寺にフィットするように思われます。
特にここで取り上げたいのは
やや異色なこの一枚。元々は現代音楽畑出身の
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルによる現代音楽作品。
1965年の八月にケイルはどんな格好で
このドローンギターを弾いていたのでしょうか?
立っていたか、椅子に座していたか、或は地べたで胡坐をかいていたか
エモーショナルに掻き毟っていたのか、坦々とミニマリズムに徹していたのか…
そんな様々な空想を抱いてしまうほど
この速度、ゆらぎ、ブレイクに残るノイズ等、全てが催眠的で魔法のよう。
僕らはただ、この音塊とサマーヒートにくらくら眩暈を覚えるのみなのです。▼
September 15, 2003
彼岸レビュー:jan lelinek "loop-finding-jazz-records"
busse posse issue music side (03/09/13)
彼岸ディスク・レビュー欄より
jan lelinek "loop-finding-jazz-records"
*「そもそもダブというのは音響彫刻の事で、
"抜き差し"特に"抜き"が重要だと考える僕は、
そこに日本人の"ひきの美学"を関連付けたくなってしまうのです。
そして、ジャマイカからも日本からも遠く離れた
ベルリンの地にあるレーベル ~scape から届けられる音源には
いつもそこはかとないわびやさびが横たわっていて
思わずニヤけてしまいます。ミニマル・ダブのひんやりとした感触は
まるでお寺の床を裸足で歩いた時みたい。
先日発売になった新作はちょっと残念だったヤン・イリネク。
彼の才能はエレクトロニカに埋没してほしくないです。
ベルリンに移住したファット・ジョンらと刺激を交換して、
一日も早く新しい作品を発表してほしいものです。▼
September 15, 2003
彼岸レビュー:Jad Fair and Daniel Johnston
busse posse issue music side (03/09/13)
彼岸ディスク・レビュー欄より
Jad Fair and Daniel Johnston "Jad Fair and Daniel Johnston"
*「奇しくも今年は両者のライブを別々に見る機会があったのですが
ダニエル・ジョンストンに特に彼岸を感じました。
僕の印象では、ずっと橋の欄干の上に登って歌っている人。
うたに演奏を引き寄せてしまうほど、
イメージを伝えようと真摯な格好が良かった。
ダニエル、ジョアン・ジルベルトやブライアン・ウィルソン等
橋の上から歌っている人は本当に良い曲を書くと思います。
そしてこのアルバムは88年に録音したジャド・フェアとの競演盤。
大好きなビートルズの"Tomorrow Never Knows"を
とんでもなくローファイ解釈なトラックで奔放に歌ってみたり、
大好きなオバケ、キャスパーについての楽しい歌
"Casper The Friendly Ghost"も収録されています。▼
September 15, 2003
彼岸レビュー:bing crosby"blue hawaii"
busse posse issue music side (03/09/13)
彼岸ディスク・レビュー欄より

Bing Crosby"Blue Hawaii"
*「まだ一度も行ったことの無い僕にとって
ハワイは"かの地"であり続けます。
この際死ぬまで"かの地"にしておいて
夢想を膨らませていたほうが
幸せなのではないかと思うくらい。
その膨張剤となり僕を苦しめているのが
このアルバムを始めとする数々の
名ハワイアン・ジャケ。
このジャケの色もかなりあの世色してます。
そしてスティールギターの音色も、
この世のものでは無いような気がします。▼
September 15, 2003
「もしもし」 - 彼岸空気をおすそわけ
*「今回の誰そ彼ではご来場頂いたお客様に"busse posse issue"(ブッセ・ポッセ・イシュー)なるフリーペーパーを配布しました。それに寄稿した[彼岸ディスクレビュー]の原稿や、
そのアウトテイクをこちらでも掲載していこうと思います。
まずは、"そもそも彼岸音楽って何?"といった導入部分を説明する為のイントロダクションとして機能していた文章を載せて、この"ヒガンオンガク"という独自のカテゴリーに対する定義としたいと思います。▼
●「もしもし」 - 彼岸空気をおすそわけ
ブライアン・イーノがアンビエントミュージックの着想を得たという有名なエピソードがあります。病の床に臥していたイーノの元を訪れた友人が、18世紀のハープ音楽のレコードをお見舞いにと置いていきました。ベッドから動き出すのも困難だったイーノは苦労しながらもそのレコードに針を落としました。しかし、ステレオの片方のチャンネルは完全に死んでいて音量も僅か、それを修整する気力も残らぬイーノはその状況でレコードを"楽しみました"。そして新しい音楽の聴き方を発見したのです。
つまりそこでは聴く為の、行為の結果として鳴ったはずのレコードが生活の環境音と等しいただの空気の振動として捉えられたということ。イーノはこの概念をエクスペリメンタルなポピュラー・ミュージックに取り入れ、アンビエント・ミュージックを発明しました。
現在、"アンビエント"という言葉は"アンビエントミュージック"という、ジャンルとしての意味合いの他に"アンビエント感"という共感覚として、受け手にも送り手にも浸透しているようです。不定形でまるで水のようなこのタームは、何にでもフィットして機能性が高いので近頃では様々な場面で頻繁に使われているからです。この、構成要素としてのアンビエントはポピュラー・ミュージックの枠を超え、時代をも超え、クラシック音楽やワールド・ミュージックの中にさえも発見することが可能なのです。
そして実は、環境音等の"非音楽"の中にこそ多く"アンビエント感"は含まれています。日々の暮らしの中で、私達の耳には多分な情報量の音が入ってくるはずです。それらは全て[環境雑音(ambient noize)]として処理され意識的に耳を傾ける人は居ないでしょう。しかし凪になら、肌理細やかな波を見つけ易いはずです。絶対的な情報量が少ない時に、特に浮かび上がってくる[日常音][環境音]などの[非音楽]それらはランダムやミニマル等とも作用して所謂アンビエント感を齎してくれるのです。
ブライアン・イーノの先例にもあるように、非音楽も、音楽と並列に位置している状態こそが"アンビエント"なのですから、お寺は"アンビエント"を体験するにうってつけなのではないでしょうか。イーノははじめにアンビエントミュージックを「静けさと、考える為の空間を作り出す音楽」と定義していますが、お寺もまた「静けさと、考えるための空間」としての機能を一面として携えているからです。
私達が手にしている"アンビエント感"というものは少々煩わしい横の壁を取払う為の手助けとなってくれています。全ての音と音を繋ぐ架け橋になっているとしても過言では無いでしょう。
つまり、大袈裟かもしれませんが、範囲は全音楽。この星全体の音がフラットに存在しているかのようなイメージ。
昼と夜、此岸と彼岸、日常と非日常、音楽と非音楽
全ての境界線は曖昧で自由な往来は困難だったはずなのですが、それぞれの中間にはぼんやりと「誰そ彼」が存在しているのです。▼
September 08, 2003
彼岸レビュー:Pharoah Sanders"jouney to the one"
*「誰そ彼で配る簡単なフリーペーパー用に
彼岸ディスクレビューを書いていまして
どうせだから、ココで出力しておこうと思いました。▼
pharoah sanders "jouney to the one (2LP/CD)"
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*「まもなく国内紙ジャケCDも発売となる
言わずと知れた名盤"jouney to the one"
やはり注目はSIDE THREEの"you've got to freedom"なのでしょう。
このファラオのテナーは何度聴いても心揺さぶられます。
うっかり涙さえもらしてしまいそうなブロウ…
例えば他に挙げるならキャノンボール・アダーリィ”something else”に収録されている
”autumn leaves”でのマイルス・デイヴィス。
「きあいのはいった」程度の表現では到底及ばぬ「たましい」を感じます。
圧倒的な音の存在、ビックリしちゃいますよね。▼
*「このアルバムは1~4面それぞれの印象が独立しているのが
名盤たる所以のひとつだと思いますが
誰そ彼的推薦面はSIDE THREEではなくSIDE TWOです。
”KAZUKO (PEACE CHILD)”は琴がフィーチャーされ
ウインドチャイムも鳴っていて"和"の要素が強く打ち出されています。
続いて取り上げているのがジョン・コルトレーンの”AFTER THE RAIN”
ピアノとテナーサックスのデュオ編成で美しくも儚げな印象を受けます。
そしてラスト”SOLEDAD”はファラオのオリジナルですが、
今度はシタールとタブラを使い、瞑想的な響きの中で
ファラオのテナーが躍動的に生命感を伝えてくれます。▼












