October 21, 2009

音楽よ そこにあれ

*「僕が前に働いていたココナッツディスク池袋店の二階で、聴くものが思いつかない時に必ずかけていたCDがありました。セロニアス・モンクの『アローン・イン・サン・フランシスコ』とプリファブ・スプラウトの『スティーヴ・マックイーン』です。この2枚はバックヤードのスタッフ取り置き棚にずっと置いてあって、いつでも聴ける状態にありました。取り置き棚には他にもCDがいくつもあるのに、ついその2枚に手が伸びてしまうのは、どんな気持ちの時でもフィットしてくる不思議な力があったからです。共にどちらかといえば内省的な作品だと思いますが、静謐で、自分に防御の膜を張ってくれるような安心のイメージがあります。
特に台風の日なんかはまるで人が来なくなりますので、これら2枚を交互にかけながら、"無人島にもっていく一枚"ってたぶんどっちかだろうな、なんて考えていました。

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同じくココナッツ出身でやはりプリファブ愛好家のサイトウ君が、誰そ彼メルマガで新譜の話を出していたので僕も買いに行きました。国内盤を待ったのは、パティ・マクアルーン(今はパティ=Prefab Sprout)による解説の対訳がついているからです。
実はこのアルバムは1992年から着手したものの、その後制作が中断されていた作品で、17年ぶりに(既にバンドメンバーは去り、パティ一人の手で)完成されたという背景があります。
サイトウ君はこのアルバムはすごい孤独感を感じてつらくもなると言っていました。それは恐らくは、みんなで作るはずのアルバムを今になって一人で作り上げたことや、『Smile』の頃のブライアン・ウィルソンの影がちらついていることなどが関係しているのだろうと思いました。

ビーチ・ボーイズというかブライアン・ウィルソンの未完の作品としてお蔵入りしたアルバム『Smile』は、ロックファンの間で長らく伝説となっていました。(ちょうど、この『Let's change the world with music』と同じように、時が経ってからブライアン・ウィルソン一人の手によって完成し2004年に遂にリリースされました。)
パティは自身による解説の中で、若かりし頃に自分もこの『Smile』の物語に魅せられていた事実を明かしています。聴きたいのに聴くことの叶わないレコード。そして『Smile』の未発表音源の一部が収録された『Surfs Up』を聴いて、"『Smile』に関するストーリーが何故消え去らないのか"、心から納得したとも語っています。

そんなエピソードや、アルバムタイトル『Let's change the world with music』からも感ぜられるように、この作品は音楽愛!そして神への信仰心であふれています。
ただし、それは盲目的なものではなく、ちゃんと冷静な批評眼やインテリジェンスを持ち合わせているパティですから、決して独りよがりにはならない作品に昇華されているのが凄いです。

僕はなんとなく小沢健二を思い出します。『ある光』という曲の中で、プリファブ・スプラウトの歌詞を引用しています。8分もある長い歌の中の語りパートでの「神様はいると思った 僕のアーバン・ブルーズへの貢献」という1フレーズ。これはプリファブ・スプラウトの1stアルバムの曲『Cruel』で結びに歌われる「My contribution, to urban blues」から取ったのだろうと言われています。

『Cruel』はいわゆる失恋ソングで、彼女にふられてしまって悲しみの底にある男が、「シカゴのブルースでも僕のこの悲しい気持ちをうまく言い表せない」と歌い、ラストに「My contribution, to urban blues」と呟くのです。これは、"この悲しみの歌がブルースの表現を拡張した。それこそが僕の(パティの)アーバンブルーズへの貢献だ"とも解釈できるでしょう。

"不在の悲しみ"という共通点としては 『ある光』 は亡くなった祖父に捧げて書かれたという曲です。そのエピソードを思うと、繰り返される「この線路をおりたら」という言葉が重くのしかかってきますが、「新しい愛 新しい明かり」の導きで、「麻薬みたいに酔わせてくれる痛みをとき」ながら、歩き続けている姿が描かれています。

オザケンも、"不在の悲しみ"の中でプリファブ・スプラウトを聴いたのかな?と思うと、『スティーブ・マックイーン』への不思議な安心のイメージや、『Let's change the world with music』の孤独のイメージ、そのどちらも内包するプリファブ・スプラウトに僕らが惹き付けられ聴き続ける事に、心から納得しました。▼


追伸:Podcast 『Qrtn-くるとん-』に3話目がアップされております。 仏教をカジュアルに語ってしまっております。午後3時の仏教放談です。お時間ある方はコチラでお聞き頂けると嬉しいです。

Posted by Takuya Endo at October 21, 2009 11:21 PM
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