May 05, 2009

鉄鼠の餅、午前11時の仏教放談

*「先週末、ようやくたそがれスピーカーの耳毛を切りました。器用な新人の初仕事によるパテ埋めでスキマもキレイにふさがれ、あとはスピーカースタンドに見合ったビスを買えば完了。お好みに応じて塗装といったところでしょうか。

たそがれ奉行所からスピーカーを運び出す際に、鼠用のトリモチを踏んづけてしまうというだっさいドジをやらかしました。当たり前だけどトリモチって凄い威力!靴下をはがそうとした時に手についたモチが洗っても洗ってもとれないんです。あとに触るものたちに粘着が伝染していったりと、街のちょっとした"困った人"(イメージとしてはジャック・ブラック)に自分がなってしまったようで大変悲しくなります。かかったエモノのサイズとしても鼠のようにかわいいものではなく、僕は所謂"大きなおともだち"スケールなのでさながら鉄鼠にでもなったキブン。別に頼豪のような恨みもないし経典はかじりませんが。鉄鼠がトリモチで退治されてたらおもしろいな。

そしてゴールデンウィーク故のゆるゆるマインドで神谷町から新橋へ流れ、「ビアライゼ」というビアバーで泡のきれいな生ビールを数杯いただきました。ビールの注ぎ方ひとつでこんなにも飲み口が変わるものかと膝をたたく。
最近、正に僕の第二邸宅となってしまっていて大変申し訳ないなと思いつつもついお邪魔してしまう居心地の良い両国の"我が家"へ帰ってワインを飲みました。

両国

明けて昼前に両国の街へ出たらお祭りの真っ最中。『第7回 両国にぎわい祭り』との事で、街全体にちゃんこのにおいが漂っています。なんだかとてもお腹が空いてきたのでちゃんこを買い求め、アサヒビールののぼりはためく青空に後ろめたさを感じながらまたも飲酒。両国にて男二人ちゃんこオン・ザ・ストリート。午前11時。

昨日からの飲酒パートナーは誰そ彼メルマガにて『午前3時の仏教放談』という素敵なタイトルの連載を開始した僧侶の杉生さん。次回誰そ彼では法話もしてくれます。僕らが陣取った場所からは浄土宗の回向院が見え、人ごみの中を歩くお坊さんの姿も発見。そういえば杉浦日向子さんの『百日紅(さるすべり)』で、北斎が回向院で大画を描いたとあったなという記憶から話題は回向院へ。
回向院はペット葬の課税是非で裁判をしていたとの事。両国の通りを見やると犬を連れた人たちがたくさん歩いています。仏教では"生きとし生けるもの全て"が救われるのだから、ヒトの葬儀に課税をしないならばペットの葬儀も課税対象とはならないという考え。陳舜臣の三国志の時にも書いたのですが仏教が中国に入ってきた頃、当時の中国の儒教思想では"生きとし生ける全てのもの(=sattva)が救済される"という考えが理解できないだろうということから、わざわざ経典の翻訳を"sattva = 人民"に変えたという話がありました。宗教ごとに命の考え方は多様です。
社会のシステムと宗教の考えの折り合いをつけるというのは、今の日本のような国ではどうしても難しい事だというのはわかります。それは置いておいて、じゃあ自分の気持ちはどうなのかというと、仏教の考えと同じです。自分は仏教徒ではないですが、なんとなく感覚的にそういうのがわかるというのは、やはりまだ仏教が生きている日本に生まれ育ったからなのでしょうか。例えば、子供の頃に見たゲゲゲの鬼太郎のマンガでは、最後鬼太郎が去る時にはよく森の虫達が鬼太郎をたたえる歌を歌うし、虫達や爬虫類達の活躍で鬼太郎が助けられる事もおおいです。そういったヤング・トラウマが植えつけられているせいもあるのかなあと。

そんな話をしながらも両国で有名だという「ステーキくに」さんのなかなかおいしい牛串を食らって、お腹も落ち着き回向院に向かいました。ちょうど回向院で法話が始まるとの事で着席。葉山のほうに住んでいるという浄土宗のお坊さんです。最初になんまんだぶを十回唱え、「我々は生きながらに罪を重ねています。日々の食事の中では生きていた命をいただいているわけですから。」というお決まりの文句で幕開け。僕は「ステーキくに」の牛を思う。
誰そ彼では法話の時間を設けていますが、誰そ彼スタッフのお坊さん達にお願いする事が多いので、知り合いでないお坊さんのお話を聞く機会は意外にありませんでした。そう思って興味深く臨んだのですが、先ほどのビールが効いてきて結局船を漕ぐカタチに…。断片的には覚えているのですが、なんとなく自分としては興味の糸口が掴めないまま終わってしまいました。

多分、音楽にも色々あるように法話もさまざま。回向院での法話は、両国のお祭りにきたおじいちゃんおばあちゃんをターゲットとするならば有効なのでしょうが、例えば誰そ彼に来たお客さんにはあまりひびかなそうな気がします。じゃあ誰そ彼ではどういう法話がいいのかなと言うと、午前11時に両国の路上で僕達が交わしたような内容だと思うのです。

まつけい坊主の連載「お寺の未来」で、<一般語>話者と<仏教語>話者の架け橋が必要だと書いています。この話は僕達からすると「同じような事はまつけい前から言ってたじゃん」という感じなのですが、この文章自体が既に翻訳仕事の結果という事だと捉えました。僕ら友人に届ける為の言葉もあれば、例えばビジネス系の新書なんかを読む人に伝える為の言葉もあるのです。そういう意味では、誰そ彼としては<仏教語>を<誰そ彼語>に訳してくれる話者を求めています。

「橋」という言葉は、誰そ彼開始当初からのキーワードでした。彼岸と此岸の架け橋。最初はイメージだけのもので、そういう格好をつけて満足をしていただけという気がするのですが、最近では本当に橋になりたいという思いがあります。お寺と音楽家の架け橋として、自己アピールが苦手な音楽家の発表の機会として、音楽以外の様々な文化をお寺と縁付ける役割など、お寺翻訳家としての仕事ならば今の世の中に溢れていると思うのです。何がどこまでできるかはわからないですが、折角誰そ彼を続けているのだから、少しくらいはそのような使命感を持ってもいいのかなと感じてきました。

回向院の歴史を見ていると、正に江戸時代は破壊と再生の歴史。火事や地震が多過ぎ。「日本の建築とか詩のような、刹那に重点をおく藝術が地震の国で発達する必然性」というラフカディオ・ハーン先生のご指摘を思いださせます。そして、1000人以上の人が乗った橋が落ちて溺死者続出なんて話題も。当時は1000人以上の人が同時に橋の上に居たのか!なんて想像の及ばない驚きと、たった今橋になりたいなんて考えていたのに不吉な、という気持ちでいっぱい。
明治時代は回向院で催眠術師の興行を行っていたりして、なんとなくあやしげな事もやってたんだなあ。さすが明治時代。これも江戸と東京の架け橋です。
(催眠術師はこの人でした。知らなかったけど面白そうな人だなあ…。)
回向院には戯作者 山東京伝のお墓もあります。そのお墓を写して解説を載せただけの渋いポストカードをわけてもらいました。山東京伝も『百日紅(さるすべり)』に少し登場します。両国界隈のこの"ちょっと江戸まで"な感じは本当にいい。

法話中の睡眠で酒気を飛ばした僕らは小腹を満たしに歩き始めました。お目当てのラーメン屋「丸玉ラーメン」が閉まっていたので、墨田川沿いを歩いて浅草へ。学生時代に池袋で愛用していたベトナム料理の「ミュン」浅草店を発見するも、こちらも閉店中…鳥カレーが食いたかった。仕方なしに上野まで歩くとこちらは大賑わい!
結局僕のホルモン欲を満たすべくガード下の「もつ焼き 大統領」へ。ちょうど競馬の時間で店内が殺気立っております。満員だったので、つめてもらっての入場だった故、既にできあがってしまわれているオッチャンにジロリ。狭い肩を更に狭めつつ、生ビールと煮込みをいただく。隣のおっちゃんはそんな僕らの肩身の狭さに同情してか「ここのモツ煮は馬なんだよ。ウマいだろ?」との優しい一声。「はい、今テレビで走ってますけど。」なんてやり取りをしました。
ここにも長々と居座ったけれど、来る客みなさんが個性派俳優のような"イイ顔"をしてらっしゃる。たまに飲み過ぎてメイワクなおっちゃんも居るけど、それをいなす店員さんもお手の物で、決して気分が悪くなることはない。どれも安くておいしいし、本当にいいお店だなー。

そしたら今度はシメを探します。何故ならGWですから。自由なのです。上野近辺が長い友人に電話をかけるも「上野でラーメンは鬼門」との助言を頂き、ラーメンなら学生街だよと思い付き御茶ノ水へ歩く。もう僕ら今日は完全にナギラーですよ。
ジャニス通いで身につけたラーメン屋は閉店で裏切られてしまい、こちらもジャニスとセットの思い出「エチオピア」がまだあいていたので渡りに船と駆け込みました。僕はいつものチキンカレー辛さ5倍ルー大盛りをオーダーして大満足。ビールも頼んだら500円でハートランドの瓶が出てくるし良心的なお店です。カレーのスパイスで体がポカポカ、その時点で東京はまだ夜の9時。さすがに帰宅しましたが、GWってイイナーっと。▼

両国2

Posted by Takuya Endo at May 5, 2009 10:22 PM
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