April 11, 2009
湯浅湾、羅針盤
*「一昨日はとあるご縁で「湯浅湾」のライブを見ました。湯浅湾とは評論家の湯浅学さんのバンド。僕は学生の頃から湯浅学さんの文章のファンで、湯浅さんの著書は愛読していましたが、音楽を聞くのは初めてです。
会場は六本木Super Delux。早速バーカウンターでビールを求めると、なんと昨年誰そ彼にsawada + harada with TSUTSUIとしてご出演くださったVJのTSUTSUIさんがカウンター内に。そういえば働いているとは聞いていましたが、思いがけぬ再会になんだか嬉しくなりました。
この日は湯浅湾が3時間一生懸命演奏するという企画で、前座もなくいきなり湯浅湾が登場します。「弾かないかもしれないけど持ってきた、散歩みたいな感じ」、と言ってギターを何本か並べているのはとても湯浅さんらしくて良いなと思いました。
演奏が始まると、湯浅さんの本で紹介されている様々なロックの名盤が頭を巡るような感覚に襲われます。ご本人達もMCで言っていましたが、ニールヤング!ローリングストーンズ!といったバンドのジャケットが浮かびます。でも必ず楽曲の文末には(文・湯浅学)とあるような感じがします。湯浅さんの音楽レビューを読んでると、まるでその音楽を聴いているような気になってくるのですが、今度は逆に湯浅さんの音楽から湯浅さんの文章が浮かび上がってくるような…。
ギターの音の粒度がなんとも気持ち良い、湯浅さんの朴訥とした歌声もいい、そして歌詞が素晴らしい。
一時間過ぎたくらいから段々とバンドがあたたまってくるのが実感できました。次の予定があったもので中座せねばならない事を惜しむ耳に次の歌詞がはいってきました。「傷口は傷口でしかない」という曲の最後に「悲しみは妬みでしかない」という歌詞。一見、虚無的でネガティブな印象ですが、それが湯浅さんの口からつぶやかれると、何故か希望の光のようなものが感ぜられ、静かに心うたれる想いがしました。
翌日、会場で頂いたチラシ「湯浅湾 アルバム『湾』によせて」を読んでみると、各界の色んな方々がコメントを寄せていてました。大友良英さんが「オレにとっての世界三大歌手は山本精一、PHEW そして他でもない湯浅湾のリーダーの湯浅学なのだ。」と書いているのですが、確かにライブ中僕も何故か山本精一さんの歌が頭をよぎりました。そして、大友さんの続く言葉「3人とも永遠に手のとどかない憧れなのに、なんか簡単に手がとどきそうなところがいい。他の2人はとどきそうな手をばっさり切り落とすような存在でもあるけど、湯浅さんの場合は、簡単に握手してくれそうでさらにいい。でも実際の湯浅さんはそんな甘っちょろい存在ではない。握手したら最後、湯浅湾とともに無限アングラ地獄に落ちてしまうからだ。」この言葉があのライブを見たせいか、帰宅途中の僕の背中にずしーっと乗りかかってきて、無性にまた湯浅湾が聴きたくなってしまいました。僕も握手してしまったという事なのでしょうか。
ライブ会場では湯浅湾のCDを買う暇も無く出てきてしまったので、今日は久々に羅針盤を聴いています。羅針盤も本当にいいよなあ。小さな音でイヤホンから流して街を歩くととてもいい。地下鉄に乗るとスネアの音しか聴こえなくなるけど、乗車シートに埋もれてうとうとするとまるで宇宙に居るかのよう。
僕が羅針盤で一番好きな歌「小さなもの」を(またも)引用して締めくくろう。
つながれてた 糸が切れて
一人だけになると
支えていたものが 取れて
誰の顔もおぼえられず
それは 小さな 小さな 小さな事
何も変わるところがない
~
先送りに されたものが
しだいに 意志を持って
切りはなされた 糸を結び
また つながれていく ▼











