March 24, 2009

バーナード・リーチ、陳舜臣

リーチ

*「昨年、日本民藝館で購入した一枚の絵葉書。バーナード・リーチの『鉄砂抜絵巡礼文皿』という作品です。"幽霊"と"Ghost"のあいのこのような、この幽かでいとおしい曖昧な姿にすっかり心奪われ、リーチのファンになってしまいました。民藝館の売店では湯呑みやご飯茶碗やら買うものがいっぱいあったせいで、後回しになっていたリーチの著書『バーナード・リーチ日本絵日記』を漸く買って読んでいます。リーチが日本に滞在していた約一年八ヶ月の間に書いた、日記やイラストをまとめた本です。頭っからやっぱりひっかかるところが多くて嬉しいので、忘れないようにメモしときます。

日本を訪れて半月ばかりのリーチに"亀ちゃんの従妹"という人物が訪ねてきます。亀ちゃんとは本名森亀之助と言い、13歳の時にリーチに弟子入りするも、早発性痴呆症を発症して精神病院に引き取られてしまったという人物。リーチは「あの頃の私にもっと洞察力と将来の見通しがあれば、まだ年端のいかない子供が外国人のもとで藝術の修行をするということは、彼の将来をただ困難にするだけという事が事がわかったのに」、と後悔しています。"亀ちゃんの従妹"から亀ちゃんの死を知らされたリーチは「気の毒な亀ちゃん!君の人生の目的はなんだったのだろう」と嘆きます。回想の中で、亀ちゃんはウィリアム・ブレイクやセザンヌやヴァン・ゴッホを愛したと語られるのですが、僕は民藝館で見たリーチのひとつの作品を思い出しました。それは『鉄砂抜絵組み合わせ陶板 森の中の虎』というもので、ウィリアム・ブレイクの有名な一節 "TYGER TYGER BURNING BRIGHT IN THE FOREST OF THE NIGHT" が彫られた幻想的な作品なのです。

他にも、民藝館が米軍の焼夷弾で燃えそうになった時、柳兼子(柳宗悦夫人)がバケツとほうきで火に奮闘して救った、などのいい話がいろいろと…。また、"日本を愛する外国人"としての先輩であるラフカディオ・ハーンの引用や想起が多い点も興味深いです。ハーンにも『日本の面影』と題された、同じような日本滞在記が出版されていて僕はこれも愛読していますが、客観的な視点から捉えた当時の日本を読めるというのは本当に面白い。ハーンだけに、焦点はやはり習慣や信仰に集まっていますし。
僕は、今よりもっとお化けや妖怪とか見えない存在がのさばっていた時代の人々の生活や信仰を知りたい。どんな事に価値があって、何を信じて彼らが生きていたのか、等など…。
最近何故だか突然三国志にはまって二種の三国志を同時に読み進めているのですが、英雄や豪傑の活躍に描写が集中している本よりも、その頃の民衆に近い視点が描かれている本の方が面白いです。当時まだまだ文化や思想は上層の人々のものでしかなく、信仰は道教を利用して組織化を図る宗教団体が現れ始める頃。西域からは仏教が伝来し始めるも、"生きとし生ける全てのもの(=sattva)が救済される"ということが、儒学の人間主義が浸透している中国人には理解できないだろうという考えから、sattvaを"人民"と訳してみるとか苦戦中だったりで。(sattvaは原文では亡霊や精霊も含まれるとの事)
戦争とか飢饉とかトラブル頻発で明日の食うものにも困るような殺伐とした時代に生きる"人民"達は、亡霊を恐れる事はあっても精霊を感じる事はあるのだろうか?とか、信仰に縋る事はあっても文化に親しむ余裕はないんじゃないか?とか、そんな事がとても気になります。

二種読んでいる三国志で後者にあたる面白いと思った本は、陳舜臣の『秘本 三国志』です。ユリイカ3月号の諸星大二郎先生インタビューにて先生が執筆にあたって参考にしている本として「陳舜臣の『中国の歴史』なんかが重宝するんです(笑)」なんて(笑)付きが意味深な感じで挙げていて…、でもちょうど『秘本 三国志』を読んでいるので副読本として『中国の歴史』も求めてみました。併読するとやはり更に理解が深まって良いです。先生は参考にしているポイントとして『山海経』や『捜神記』などの怪しい方面からの引用が多い事を挙げていますが、『山海経』も気になるんだよなあ、最近。モロ☆先生と三国志の影響で、中国の神話や歴史にこれから潜ってみたい心境なのです。▼

::過去の関連エントリー::
2007年8月 - ルドンの黒、ジュークボックスに住む詩人(Ghost画つながり)
2007年7月 - Japanese suburban symphony(民のくらしつながり)
2004年8月 - ENCHO'S GHOST(幽霊画つながり)

Posted by Takuya Endo at March 24, 2009 11:49 PM
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