October 03, 2006
のすたるじゃ

*「先日、人の薦めでP.K.ディックの短編集を読みました。ディックを読むのは10年ぶりくらい。SFだからもちろん時代設定は未来なのですが、つきまとうこのなつかしさは何故だろう?久々に読んだからとか、昔に書かれたからとか、そういうのではなくて作品の世界全体を覆う色彩が褪せている。ずっとアンティークショップの中を歩いているような心持ちでした。読み進めるにつれ、かつて自分がその世界に居たかのような錯覚さえおぼえ、これはディックの描くSFの世界にノスタルジーを感じているのだと気付きました。本に限らず、音楽にだって景色にだってそういうものがたまにありますよね。郷愁のような感覚。僕のここ数ヶ月のキーワードはその"郷愁"だったのです。
発端は更に遡る事ウンヶ月前、人の家で何気なく読み始めた坪田譲治先生の『せみと蓮の花・昨日の恥』。予備知識も無く直感で人の本棚からチョイスしたので、それが彼の老成期の作品を集めたものだという事は後から知りました。『せみと蓮の花』というお話、主人公(=少年期の坪田)を取り巻く環境は決して幸福ではないのに、瑞々しい感受性と素朴で美しい生活のシーンが描かれ、それを読んで何故だか自分に対する焦燥感のようなものを覚えました。過去の日々。この話は坪田譲治自身が80歳を越えた時に、今までの自分を思い出しそれまで常に自分に付き纏っていた「死」をテーマに綴ったものです。「死」の裏返しとして少年期のバーフェクトワールドを実体験に基づいて描いています。実体験。80歳にして尚鮮烈に残るほどの記憶、ちゃんと拾ってとっておいた優秀な脳みそがとても羨ましいです。それで、僕を含む万人を惹きつけ、何度でも帰りたいと思えるノスタルジアを築きあげたというわけです。僕も一生のうちにカタチはどうあれそんなものを遺してみたいともやもや考えていました。
これら2作品は僕が偶々短い期間に遭遇した自分自身のノスタルジーのツボなのですが、他の人が接したところで郷愁の片鱗にも触れなかったりするのでしょう。また、僅かに重なったりもするのでしょう。自分のそのツボが段々と判明していくのは楽しいです。脳みそのせいか環境のせいか時代のせいか、残念なことに僕は坪田先生のような美しい描写の素材足りえる記憶は持ち合わせちゃいませんが、こうやって外部から自分にとっての郷愁のエッセンスを拝借しながらパーフェクトワールドを捏造していくのは人生の楽しみとなるかもしれません。そして僕が妖怪好きなのも、郷愁収集の一端という事もあるかもしれない。
[以下、近況]

邪魅の雫を読みました。まだ読んでない方も多そうなので細かい感想は書きませんが、昨晩の雨の中人ごみを歩きながら傘から傘へ落ちる雫の動きを見て思ったのは、相変わらず事件のモデリングを凝ってらっしゃるなあと。美学、があるのでしょう。それと、前述した"自分の世界"、"パーフェクトワールド"というのが作中で一つのテーマになっていたので僕としては勝手にシンクロニシティ…。
他には三橋一夫先生のふしぎ小説にはまっています。これも僕の郷愁の雫。
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音楽は久々にジャズをよく聴いています。数年前に買ってよく聴いてなかったり内容を忘れたレコードがいろいろあったのでそれらを改めて。それと、人のお薦めでCDを借してもらったのですが高瀬アキというピアニストがとてもよかった。セロニアス・モンクやエリック・ドルフィーの曲をよく演奏していて、セシル・テイラーに共感を寄せているというピアニストなのですが、それらの方々のレコードを聴く時の気分によく似た印象を持てます。とんがっていて、あったかい、こんな人がいるなんて知らなかったなあ。ライブもみてみたいです。
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新譜ではケリスのやつが良かったです。暖かい質感のトラックやラップ風のヴォーカルに何故かTLCの2ndを思い出しました。ネプチューンズを卒業しキャラや飛び道具無しでもいけるという、KELISの実力が見れて安心。僕としては次のアイドルを探さねばという気持ちに。
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ROOTSも新しいのがでました。ここ数作品のサウンドの振れ幅をROOTSの真ん中の柱で吸収したような安定の一作です。DEF JAMに移籍してセルアウトと思われたくなかったとの事。なるほロケット。前半でクエストラブが叩きまくり、後半はサンプリング主体。RADIOHEADを使ったりJayDeeへの追悼曲などおセンチなROOTSとなっていました。
郷愁の音楽には近頃出会っていませんが、この秋めいた空気の中、カーティス・フラーが吹くベサメムーチョを聴いて運動会を思い出したりしています。
僕も邪魅だとか邪ズだとか、あまり邪なことばかりしていると…▼











