November 21, 2005
奇談
*「土曜日、映画『奇談』を観てきました。諸星大二郎先生の名作『生命の木』が原作で、妖怪ハンター稗田礼二郎は阿部寛が演じています。
原作は諸星大二郎の“妖怪ハンター”(稗田礼二郎のフィールドノートより)というシリーズもので、当初は少年ジャンプに連載されていたそうです。ジャンプ連載は5回で切られてしまったようですが、その後も少しずつ描き続け最近待望の新刊『稗田のモノ語り・魔障ケ岳』も出ました。映画公開の影響か、過去のシリーズもまとめて文庫化されていますので、興味を持たれた方はこちらで読むのが便利かもしれません。地の巻には、作者自身が不満足な出来だったという理由で入手し難かった作品『死人帰り』が収録されているというファン泣かせの仕様です…。
このシリーズは諸星大二郎作品の中でも民俗学的アプローチが色濃いもので、考古学者・稗田礼二郎が日本各地で出会う様々な伝説に絡んだ事件を描くというものです。原作『生命の木』において稗田礼二郎の役割は語り部であり、一応の主人公役として民俗学を研究していると思われる学生の青年が登場します。それでも、彼もあくまでも事件の傍観者に過ぎず、舞台となる村での顛末には深く関わらずに、彼や稗田礼二郎が見ているものが坦々と描写されていくのみです。諸星漫画は勿論これでいいのですが、映画化にあたってその辺りにメスを入れようとしたのか何故か主役は女性の藤澤恵麻(里美役)となっています。
(以下多少のネタバレ含む、観る予定の方はスルーで)
彼女のインタビューによると、里美(役名)は「ナビゲーター的存在」と認識して演じているようですが、本を理解できていないのか劇中ではまるでナビゲーターたり得ていないし、「里美の稗田礼二郎に対する憧れの気持ちも意識した」などとやや的外れと思える心構えも語っています…。
里美という主観を導入するのは客観に徹した原作を映画化するにあたっては順当ともいえる行為だと思いますが、稗田シリーズにとっては果たして吉だったのかという疑問が残りました。原作は短篇なので脚本へはあまり切らずに載せ、一見原作を壊さぬように丁寧に書いているという印象は受けるのですが、寧ろ“説明し過ぎ”のげんなり感も。そして、主観導入の為(と時間稼ぎの為)に原作に無い“神隠し”の要素を取り入れていて、それがかなり消化不良というか蛇足の域です。映画っぽいストーリー性を先んずるあまり、原作の重要なテーマを侵食してしまっています。原作を知らない人が単純に伝奇的ホラーものとして観る為に作られているといった感じです。(そもそも原作に“ホラー要素”はありません)序盤は怖さを盛り上げるような演出や効果がなかなか優秀だと思ったのですが、諸星大二郎先生の不気味ファンタジーな雰囲気を味わいたいファンにとっては正直物足りないというかお門違いです。色々な意味で映像化しづらい部分が多い原作という事はわかりますが、ならばもう少々別の方向性も考えられたのではという後味でした。▼











