December 14, 2004

貧乏神 (びんぼうがみ)

*「妖怪というものは貧しくても楽しい、物質的に満たされていなくても楽しめる娯楽の一つだと思います。暗闇など、判断し難い何かさえあれば、頭の中の情報で補完する事が楽しいものですし、究極的には強引に見るものだと荒俣宏先生もおっしゃっていました。ただ、今この世でそれを本当に実現できているのは、生みの親である水木しげるさんのみと言っても過言ではないかもしれません。

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並の妖怪好きをサンプルに採るならば、所謂趣味一般にかかる費用の平均値をとったとしても中の下、もしくはそれ以下くらいにランクされますでしょうか。研究者やコレクターレベルの別格を除けば、そこまでお金のかかる趣味だとも思えません。同じファンなら妖怪ファンよりジャニーズファン、同じ馬鹿なら妖怪馬鹿よりブランド馬鹿のほうが圧倒的に出費は多いでしょう。まあそれも本人のやり方次第だともいえますが、知識欲を満たすには最近では数多くの良くまとめられた本が出ていますし、グッズ欲にしたって気に入ったものを選んで買ってるくらいならば家計を苦しめるまでには至らない程度となるでしょう。

例えば、現在東京にきている“Oh!水木しげる展”等は妖怪好きにとっては何年に一度くるかわからない、もしかしたら有史以来初めてかもしれない規模のお祭り騒ぎ。その物販コーナーでは、鬼太郎グッズといえば、な「やのまん」※1 がカラーの立派な通販カタログを配布して普段は微塵も見せない商魂を露にします。対する鳥取のROAD OF THE 霊毛ちゃんちゃんこことゴブリンハウス妖怪舎※2 も鬼太郎茶屋を抜け出してレジを構えます。そんな鼠猫同舟ともいえる状況の中で思わず緩んだ僕の財布でさえ、福沢諭吉一枚放出には達しない程度です。

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そんな、まだまだ続くお祭り騒ぎの中で2万枚限定のパスネット発売という妖怪的物欲を刺激する情報があり、こいつは正に仕込み刀の切れ味ぞと勇んで発売日の朝早くに自宅近くの都営大江戸線光が丘駅に駆けつけました。パジャマ同然の妖怪スタイルですが、僕としては行列覚悟の意気込みでした。しかし…想像していた特設販売ブース(たまに夏休みフリーパスとか駅員さんが販売している感じのやつ)などその影さえも見つけることができず、ああ妖怪だから真夜中発売?なんて思いながらパスネットの自販機を見ると何事もなかったように電車の絵や路線図がついてるデフォルトデザインのカードの横に水木デザインのカードがディスプレイ…。土曜の朝の地下鉄の駅なんて六本木から落ちてきた落ち武者の如きギャルの屍が転がるばかり(妖怪名:ボディコニアン)、並んでる人なんて一人もいやしない。しかも、機械故障か「販売中止」のランプが点灯しています。この寂れ具合こそ妖怪なりと思いつつ、それでもまだちょっとドキドキしながら駅員さんに
遠「パスネット買いたいんですけど機械が壊れているみたいで」
駅「どのカードですか?こちらで販売できますよ」
遠「せ、千円の、み、水木しげるサンのやつ二枚ください(ドキドキ」
駅「ああ、ちょっとまってください」
遠「(ドキドキ)」
駅「今機械直したのでそっちで買ってください」
…結局、普通に機械から購入するハメになり、裸のカードを二枚握り締めて帰途の自転車をこぎました。うれしいような、さみしいような。限定カードをGETしたというのになんだか寂しさの残るこの感じ。荒俣先生の講演会も二時間前に駆けつけてサイン本も手にしたというのに、あまりの周囲のファンの脱力ぶりにこれと同じ気持ちを味わったのを思い出しました。土曜日の朝、そんな僕に響いた水木大先生の有名な金言、「なまけものになりなさい」うーん、ロード・オブ・ミズキはまだまだ遠き道のり。

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そして最近の妖怪出費として是非紹介したいのが、『平成17年度版必携妖怪暦』です。季刊の妖怪誌「怪」の別冊として出版されたこの手帖は正に“妖怪好きの使う手帖”、そのニッチぶりが最早目玉の親父のお風呂サイズです。何が素晴しいって予定書き込み部のページ全てに水木大先生の名言が書かれている点です。同じゲゲゲ好きの友人に言わせれば「すごいね、これがあるだけで毎日生きていけるね」…同感です。どうせ妖怪なんて暇なんだから予定書き込みのスペースなんて狭くていいんです。その分妖怪的な祭礼がデフォルトで書き込んである方がよっぽど実用的です。そして妖怪用語ミニ事典、フィールドワークや文献読書に活用できる度量衡や旧国名地図・方位と時刻などの早見資料。妖怪関係史年表では、
593年 聖徳太子が摂政になる
905年 宮中に鵺が現れる
1922年 3月8日、大阪にて武良茂(水木しげる)が誕生する
がフラットに並んでいる美しさ。鎌倉幕府開府と水木ロード完成が同じくらいの扱いというケッコウな年表です。更に、元号一覧、天皇一覧、にそれらの対応表まで付くという至れり尽くせり。ラストには妖怪探索心得やフィールドワーク時の服装まで掲載されていてなんだか小学校時代の遠足のしおりをおもわせる作りです。そうしたら矢張り奥付に協力:村上健司氏の名がありました。『妖怪ウォーカー』の彼を思わせる仕事や心遣いが随所に見て取れます。

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↑表紙を外した雄姿、右隣は間も無く役目を終える平成16年度本願寺手帖

てな具合の僕の妖怪消費生活ですが、荒俣先生が言う所では妖怪研究家は貧乏だが肥えた人が多いとの事。…妖怪で食うにはまだまだ市場が狭過ぎる。研究ともなればそれなりのお金がかかるし、わざわざお金を出して研究をさせてくれる懐の広い大学も無いのでしょう。それでも何故か肥えた人が多いというのは見ての通りとしか言い様が無いですが…。たくさん食べなきゃ辛いはずなのに、妖怪が好きだから妖怪研究を続けられるというのはやはり妖怪の魅力の成せる技でしょう。いつか夜間の妖怪大学(にんげん用)ができればいいですね。

今日のニュースで水木さんの妖怪100体構想を実現する為に境港市がスポンサーを募集し始めたようです。やっぱり妖怪はびんぼうだ。しかし、境港市が急いでるのが気になりますね…。

最後に『平成17年度版必携妖怪暦』に収録された水木大先生の金言を引用させていただき締め括りましょう。

● 「善良な人に好んで入りたがるのが貧乏神の特徴です」

…うーん、恐るべし妖怪ロジック。


※1 そういえば「やのまん」といえばジグソーパズルらしいですが、僕の「やのまん」の記憶はSFCとGBで発売されたRPGシリーズ『アレサ』です。

※2 妖怪舎のサイトで発表されている鬼太郎茶屋俳句大会入選作品は傑作揃い!オススメは中央区・折原さんの作品。▼

Posted by Takuya Endo at December 14, 2004 08:38 AM
Comments

こちらではハジメマシテ。
妖怪手帖…島におりますとまだお目にかかって居りません。
発売日にネットで注文しましたが。。。届くのを心待ちにしております、はい。
使い勝手の悪い本願寺手帖にホコリを被せ、来年は妖怪手帖で幸せに暮らします。
貧乏神・・・ぼ、僕は京都伝道院生活から島に帰るとき、
悩みに悩んだ挙句・・福沢諭吉一枚で高さ(目玉含む)約30cmの鬼太さんソフビ人形を連れて還ってしまいました・・・よ。

さて、妖怪大戦争は新年正月6,7,8日と行く事に相成りましたので、
お会いできればと思います。

Posted by: カト at December 14, 2004 04:20 PM

カトウさんこんばんは。

妖怪手帖、まだ平成17年が始まっていないのについ本願寺手帖と二冊持って出てしまうかわいいヤツです。

30cmの鬼太さんソフビなんて羨ましい。しかし、妖怪の多い島に連れてかえってもらってさぞや活躍してることでしょう。

そういえばサンシャイン60の地下街の駄菓子屋さんでやたらとデカイ鬼太郎人形(妖怪ポスト付)が展示してありますが、確か値段は諭吉数十人いないと連れて帰れない額だった気がします…。

Posted by: エンドウ at December 14, 2004 11:20 PM
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