August 29, 2004
反枕(まくらがえし)
*「昨晩は光明寺にて開催された「お寺deまくら」に参加しました。”枕を持参するべし” という事だったのですが、枕を持っていく事が物理的にやや難儀であったことと、(枕に対して)執着の無い事がまるわかりな何の変哲も無い枕を持って行っても、そこから導き出されるのは僕の枕に対する執着の無さのみであろうという点でもって、枕を持参しませんでした。代わりに、普段部屋でうと寝する際によく使うその辺に転がっている厚い本や雑誌類、どうせなら自分が大事にしている(実はまだ枕にした事はなかった)聖典『画図百鬼夜行』 /鳥山石燕 を持っていこうと、しかも百鬼夜行には妖怪“反枕(まくらがえし)”も収録されているし、"反枕" - 枕を考える会にハナからアンチまくら"反枕"で挑むなんて粋じゃねえかと、生来のあまのじゃく気質とも合致を得、ほんとに思いつきとこじつけでソレを携え参加しちゃいました。
ワークショップといっても砕けた雰囲気でお酒なども飲みつつすすめられた「お寺deまくら」は、“理想のまくら”論からは逸脱した僕の素材も、オトナの懐の深さであたたかく迎えいれて頂き、結果「一反木綿まくら」や「子泣き爺まくら」などの妖怪まくらシリーズとしてアイデア化されました。水木サンによる妖怪のキャラクター化は新たな器物の妖怪化をも促すのかと愉快な気分になりました。フハッ!
僕が持参した現行の『画図百鬼夜行』(高田衛監修/国書刊行会刊)では”反枕”の項で、宮田登の『妖怪の民俗学』から、「(枕とは)別な世界に移動するための、夢を見る呪具」と捉えられていたと引いています。夢の世界”異界”と現実の境界線/扉としての枕。そこで枕をひっくり返されてしまうと、オモテとウラが逆転してしまうから異常であると恐れられていたそうです。北枕にされてしまう事がよくないとされていたのかと思っていたら、枕の方角をひっくり返される事自体が凶相となるようです。確かに枕を東西に向けていれば、反転させた所で北枕にはならないですね。東北地方に於いてはそれは座敷童の仕業であるという説なのですが、僕のイメージは幼少の頃に植え付けられたトラウマともいうべき「ゲゲゲの鬼太郎」のエンディングロールに出てくる、あの小鬼のような恐ろしい形相のアレが強いです(EDテーマである「おばけがイクゾ~」を歌う吉イクゾ~氏の顔にやや似て蝶)座敷童による”枕がえし”は人間の迷信を利用した”いたずら”と思えて可笑しいのですが、イクゾ~似の”枕がえし”の仕業だと思うと途端悪意が増幅するというか、先人の恐怖にシンクロしてしまうのは何故でしょう。形相が異常だからでしょうか?、、、恐るべしイクゾ~。 - 「♪ゆう事聞かない悪いコは、夜中迎えにくるんだよ~」・・・
また、水木しげるの『妖怪画談』の”座敷坊主”の項によると、「天竜川中流の、ごく深い山間部のある家に”座敷坊主”があらわれるという ~(中略)~ 怨霊であるともいわれているが、とにかく坊主が出てきて、枕返しをするのだという。枕を返す妖怪といえば”枕返し”が有名だが、この座敷坊主というのは、ちゃんと坊主の姿で現れるらしい。」とある。座敷坊主はおそらく座敷童と枕返しの性質を共有した結果の妖怪かと思われますが、何故坊主のくせに家に居て枕を返すのかが謎ですね。寝ずの修行で辛かった坊主の恨みか。・・・成る程、松本坊主、お前も枕返しか。「お寺de枕」の意義がここでもちらり。
「お寺deまくら」で紹介された昔の枕の中には、「聴き耳をたてる為の穴の穿いた枕」というものがありました。これは前述の”異界への扉”機能のx軸バージョンというか、巷間の噂話やら風評やらをキャッチするアンテナという方面からじっとりじとじとと妖怪に関係しそうだと思いました。”枕の民俗学”というのも面白そうだなあ。誰かやってるかしら。呪具としての枕は夢への通り路の発見を容易にするために、箱枕の中でお香を焚く機能もあったようですが、現代ではアロマという形に姿を変えて残っているようです。昔の人は臭かっただろうから現実問題として必要だったとは思いますが、それに関しては媚薬的効果との綺麗な説明が加えられていました。現代のアロマクラは香りの好みが分かれるので、昔のお香を焚ける枕の方が香りを気分で代えられる分拡張性は高そうですが、単純に安全面で却下されているのでしょうねえ。
結局僕の班が発表した理想の枕は「人のためにしてあげる枕」という事で、電車の座席シートに座っている人の肩に装着する枕です。「好きに肩使って寝るがいいや」という人間愛に溢れたソレを始め、呼称としての腕まくらを精神的な枕に昇華するための契機となりうる最もミニマムな形態として腕に巻くレース(所謂枕の端のヒラヒラを意味している)や、赤ん坊をお風呂に入れる時のだっこする手につけるちっちゃい枕(指輪の形をしていて使用時に掌側に回す)等でした。”人の為にしてあげる枕”、即ち「これぞ枕がえし!」なんて言葉遊びという呪詛でもって、まな板に載せるにはあまりに畑違いかと思われた僕の素材、妖怪”反枕”も、これにて一件落着と相成ったのであります。
夕暮れの音楽イベント「誰そ彼」に対し明け方の枕ワークショップ、「お寺de枕」は「彼は誰」サイドとも云えますが、本堂で雑魚寝をしているみんなの枕を、座敷童と座敷坊主のタッグチームで、いたずら枕返ししてあげたい気分にかられました。お寺で合宿だなんて怪異を期待しないほうがおかしいってもんですよ。▼
Posted by Takuya Endo at August 29, 2004 06:53 PM










